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GSOMIA破棄:左のトランプ・文在寅「革命」は韓国をどこに連れていくのか①

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GSOMIA破棄:文在寅「革命」は韓国をどこに連れていくのか①

2019年08月23日 14:01



GSOMIA破棄を韓国が決定。ついにここまで来てしまったか(行ってしまったか)と暗澹たる気持ちになる。
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GSOMIA破棄を決定した韓国の国家安全保障会議(韓国大統領府Facebookより)
韓国は、今後とも、「我々の側」(日米)にいるのか、それとも、将来的には、南北統一を前提に「大陸の側」(中国)に元っていくのか、ますますわからなくなった(後者の可能性が結構高い)と思うからだ。もちろん、単に、「北朝鮮についてはもはや日米韓はない」という限定的なメッセージに過ぎない、とか、日本を排除して、「南北朝鮮プラス米国」を想定しているのかもしれないが、実際問題、日本との協力を抜いて、東アジアの安全保障体制やインド太平洋戦略を実施することは難しいので、意図はともかく、解決ができないまま時間がたてば、結果的には、韓国は米国の陣営の中では相当、あちら側に近い存在となっていく可能性が高い。
GSOMIAは、日韓の軍事機密情報共有を可能とする協定であるが、実際問題は、北朝鮮の軍事機密情報を日米韓でリアルタイムで同時に共有する上で有用であることから、日米韓の安保協力の象徴のような存在である。したがって、その破棄は、実質もさることながら、対外的に日米韓安保協力の綻びを印象付けるという意味で深刻である。また、日米韓のみならず、韓国が、米国の要望も聞き入れなかったということであり、米国の威信の陰りを示すのみならず、米韓同盟にも悪影響を及ぼすだろう。
したがって、韓国にとって、北朝鮮を短期的脅威、中国を中長期的脅威と考えるのであれば、GSOMIA破棄は、韓国自身の安全保障上の利益に反する行動である。韓国が合理的行動をとったと捉えるのであれば、韓国は北朝鮮も中国も長期的には脅威とならないと考えていることになる。そうでないなら、韓国は非合理的行動を取ったということになる。
いずれにせよ、今回のニュースを聞いて一番喜んでいるのは、中国だろう。東アジアにおける米国の影響力の低下を感じさせるからである。折しも、「中国版GPS網が米国を抜いて世界最大に」など米中の冷戦の勝者は米国ではないのではないかと思わせるようなニュースも出てきている。
北朝鮮は、喜ぶと同時に、文在寅大統領が南主導の南北統一(北朝鮮にとっては最悪の事態)を真剣に考えているのではないかと心中複雑なのではないかとも推察する。
今回のGSOMIA破棄決定は、文在寅大統領のイニシアティブだろう。GSOMIA破棄は、安全保障のプロや外交のプロの発想からは当然には出てこない(「個別部署ではなく政府全体の判断」というカンギョンファ長官の発言も「私は賛成じゃなかったんだけど」的ニュアンス)。北朝鮮を韓国に対する脅威と考えるのであれば、日本以上に韓国自身の安全保障にとっての不利益となるからである。
韓国のメディア論調も延長ありの想定であったし、最近会った与党系(共に民主党系)の元議員達との言説からも、「GSOMIAは米国との関係もあるので維持されるに決まっているので心配するな」との見解が圧倒的であり、文在寅大統領が、国内世論に抗せざるを得なかったという状況では全くない。むしろ、国内世論もGSOMIAは気に入らないけど延長でもしょうがないよね、という論調の中、文大統領が国民の予想に反してGSOMIA破棄を決定したのである。今後、韓国世論がどうなっていくのか注視していきたいと思う。
それでは、文在寅大統領は、何を考えたのか。
単純に考えれば、「日本も安全保障上の措置というなら、日本のホワイト国外し決定に対する対抗措置として、安保分野のGSOMIA破棄をして、米国及び日本に対して圧力をかけ、ホワイト国外しを撤回させるため」とか、「日本の暴挙に対して、韓国の意地を見せる」といったところであろう。韓国としては、GSOMIAは、日本が望むから締結したのであって韓国としては嫌々締結したものだという認識だ。
韓国も利益を得るのにおかしな話だが、韓国は、日本との安保分野の協力には過去の歴史から強いリザベーションが元々ある。私が韓国に赴任していた2012年頃にも、ほぼ締結寸前にいったが、日韓関係の雰囲気が悪く直前で頓挫した記憶がある。ようやくパククネ政権の最後の最後になって成立した。
韓国は、日本の輸出管理運用見直しの意味するところをわかっている。要するに、信頼関係が崩れた結果「韓国はもう日本にとっての特別な友達ではない」ということである(普通の友達ということ)。自分が信頼関係を崩しておいて逆切れするところは理解しがたいが、「もう私のこと信頼できないっていうなら、GSOMIAも無理だよね」という韓国式の逆切れなのだ。
また、韓国は往々にして、というか特に日本絡みのことについては、戦略的判断よりも感情とか「正義」を優先しがちなので、今回もその一例という見方もできる。2回も特使も送ったし、8月15日の光復節でも文大統領からは、対話を日本に対して呼びかけたのに日本側が反応しなかったことが原因という指摘もある。
もともと、韓国の一連の一方的な反日行為で日韓関係を崖下に落としたわけで、特に深刻な旧朝鮮半島出身労働者問題については日本からの協議・仲裁要請を無視しておいて、何を言っているのだろう、と日本人は思うわけだが、お互い自分がやった行為については軽く考えがちということは言えるのかもしれない。これがスタンダードな見方だろう。
それと二律背反なわけではなく、むしろ両立するものであるが、私は、文大統領自身の長期アジェンダが大きく影響していると考えている。すなわち、日本の輸出管理運用見直しを奇貨として、自分の長期的アジェンダである、①南北統一と②積弊清算(親日派清算、社会の主流派を保守派から左派革新に変更すること)の双方を推進するつもりなのだろうということである。
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光復節で演説する文大統領(大統領府Facebookより:編集部)
文大統領が8月5日に「平和経済(南北統一)で日本を超える」と言い出し、翌日には日本の輸出管理運用見直しを理由に(一体何の関係が?)、公務員に対する監視を強化すると発表した時から、ずっと文大統領の真の意図について懸念していた。
今回のGSOMIA破棄については、予想外だったという声が多いが、私は8月5日の彼の声明を聞いた時から、GSOMIA破棄は、韓国政府関係部局的にはないが「文大統領的には」ありなのではないかと疑っていた。
文在寅大統領の「南北統一して日本に対抗しよう」という趣旨の発言に、単なる来年の国会議員選挙や政権浮揚だけではなく、韓国を本質的に変質させて反日を結節点としての南北統一国家の誕生を予期しているかのように思え、「韓国は一体どこに行くのだろう(連れていかれるのだろう)」と桁違いの懸念を覚えたのだ(杞憂であることを未だに願っている)。
15日の光復節の抑制的演説も、これは、対外世論戦の一貫ではないかと思ったぐらいだ(世界の目から見て、「韓国の方が理性的で悪いのは日本」と見えるような状況を作るため)。短期的には韓国に不利益であっても、南北統一のためであれば、日本を「敵」にして様々な統一のために必要なアジェンダをこなすことは合理的行動であり、統一朝鮮となるのであれば、いずれにせよ米国からも一定の距離を置くこととなるのだから、そのきっかけを自分で作るより日本のせいにしてしまう方が負担が少ない、というのは合理的行動である。
反日の統一朝鮮というのは日本としては是非とも避けたい最悪の事態であり、また、その時の韓国がどのような韓国になっているかを想像すると、余り一般の韓国国民にとっても幸せとも思えない。善良な韓国の一般国民はそんな文大統領の「意図」には気づかないまま、ピュアな気持ちで不買運動に参加しているのだろうが、少なくとも文在寅大統領にとっては、「反日」は真の野望のための一石二鳥のスケープゴートという面があるのではないだろうか。
もっとも、先般会った韓国の元議員の中にも、「日本の『報復』は、嫌韓を利用して憲法改正をするための日本の野望なのではないか」と真顔で聞いてきた人もいるので、お互い疑心暗鬼になっているだけなのかもしれないけれど。
いずれにせよ、数年前から、北極海航路を念頭において、対馬防衛の重要性を訴えてきたが、ここに韓国の要素も加わることになる。我々は対馬をもっと重視するべきだ。国境も防衛線も対馬なのだ。
文在寅大統領は、「左のトランプ」ともいうべき存在であり、決して侮ってはいけない。北朝鮮からミサイルを連射されようと、ひどい言説で貶められようと、全くぶれることなく一貫して南北融和(南北統一)を進めようとしてきた。
最近になって、北朝鮮が韓国に対して「米朝に勝手にしゃしゃり出てくるな」といった厳しい言説を繰り広げているのは、北朝鮮が南主導の半島統一を恐れている(嫌悪している)からだろう。GSOMIA破棄も、日米韓協力の綻びや米韓同盟の弱体化につながるという意味では、北朝鮮は大歓迎であろうが、韓国の南北統一コールには複雑な気持ちだろう。
金正恩委員長はリアリストである。「民族の夢」などよりも、北朝鮮、というより金王朝の存続の方が大事だ。無論、北主導の統一ならウェルカムだが、南北融和は行き過ぎると諸刃の剣だとわかっているのだ。北朝鮮国民が豊かな韓国と自由に行き来できるようになったら、どのようなことが起こるかわからない。
北朝鮮からすれば、核兵器やミサイルを温存したまま米国との関係を正常化し、金王朝と北朝鮮の安全と経済的繁栄を実現することが優先事項なのだ。韓国の存在価値は、短期的には、この金正恩のアジェンダにどう貢献できるかという観点から測られるに過ぎない。
戦後74年、世界は冷戦、米国一極集中の時代(パックス・アメリカーナ)を経て、中国の台頭により米中角逐というか米中冷戦に入った。世界的にみても、米中関係、香港情勢、イランを巡る情勢、北朝鮮の核問題、英国のEU離脱など、国際社会の潮流を変えるような大きな動きが目白押しだ。過去の「力の時代」に回帰したように思う。そのような中で、日韓関係は、65年の国家間関係開始以来、はじめてといっても良い次元の違うレベルの危機に直面しており、関係そのものが大きな再調整のプロセスに入った。
文在寅大統領という特異な革命家の大統領の存在自体が要因の一つではあるが、日本側も、もはや韓国を韓国であるという理由だけで特別扱いすることは止めたということが大きい。
今後日本はどうすべきか。
いろいろ頭をよぎるが、考えあぐねていて、これという具体的提案はまだできない。それは、ひとえに短期的な関係改善策が中長期体な方向性を変えることになるかどうか自信がないからだ。
つまり、直近でいえば、最悪の事態を避けるためには、文在寅大統領が来年の国会議員選挙で大勝利するような事態は是非さけるべきである。したがって、文大統領が支持率アップに使えそうな材料を与えることは止めた方が良い。そのことだけを考えた場合にやるべきことと、中長期的に韓国がどこに向かうかを想定した場合に取るべき行動とが同じかどうかわからないということである。
外出の用があるので、一旦、ここまでとして、続きはまた書きます。尻切れトンボでごめんなさい。

松川 るい   参議院議員(自由民主党  大阪選挙区)
1971年生まれ。東京大学法学部卒業後、外務省入省。条約局法規課、アジア大洋州局地域政策課、軍縮代表部(スイス)一等書記官、国際情報統括官(インテリジェンス部門)組織首席事務官、日中韓協力事務局事務局次長(大韓民国)、総合外交政策局女性参画推進室長を歴任。2016年に外務省を退職し、同年の参議院議員選挙で初当選。公式サイトツイッター「@Matsukawa_Rui


GSOMIA撤廃の次は、国家保安法の成り行きに注目 文在寅打倒クーデターは、本当に起きるのか?

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文在寅打倒クーデターは、本当に起きるのか?

2019年08月24日 16:00



韓国・文在寅政権が、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を決めたことで、北朝鮮との「赤化統一」路線に進むのではないかとの懸念が現実味を増している。
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安全保障会議でGSOMIA破棄を決めた文大統領(韓国大統領府Facebookより)
北朝鮮は、GSOMIA破棄を歓迎しているはずなのに、けさ早く短距離弾道ミサイルを発射したが、松川るい参議院議員が昨日の論考で分析したように、「南北融和は行き過ぎると諸刃の剣」であり、できる限り体制を護持したいのが本音であると推察すれば、短距離ミサイルの発射は、統一に向けた、ある種の主導権争いの一里塚と解釈できるかもしれない。
元自衛隊情報幹部の鈴木衛士氏が以前予測したように、「GSOMIA破棄なら文大統領は失脚」とみる向きはあるものの、文大統領の任期は2022年5月まで、まだ3年弱ある。一線を超えた文大統領が自らの生き残りもかけて、反日と北朝鮮との融和をさらに進めていくことへの危惧は増すばかりだ。
そうした中で、北への傾斜を強める文政権に対し、韓国軍がクーデターをする説が出始めている。夕刊フジは、アゴラでもおなじみ元韓国国防省分析官、高永氏に取材を行い、
「現役の将官らは100%近くが、『まさか』と失望しているはずだ。軍人は敵(=北朝鮮)と戦い、勝利するのを目的にしているが、『このまま北朝鮮に韓国が飲み込まれるくらいならば』と、正義感の強い一部の軍人たちが、政権の指導者に政変(クーデター)を仕掛ける公算がより大きくなった
とする見方を報じた。さらに、著名な軍事アナリストの小川和久氏も、GSOMIA破棄の翌23日夜、Facebookの公開投稿において「GSOMIA破棄、韓国軍部は動きを見せるか」と問いかけた。これに一般の人から「クーデターとかは、あり得る問題でしょうかね」と尋ねられたのに対し、小川氏は
文在寅が北朝鮮を利していると思ったら、起こりうることだと考えておいたほうがよいでしょう。日本の物差しでは判断できない国ですから。
とコメントしている。筆者は小川氏のメルマガを購読しているので、そう判断する根拠について今後の配信で詳細が読めるのではないかと期待しているが、朝鮮半島の軍事・安全保障を知り尽くすお2人がクーデターの可能性がそれなりに強まったというからには、あらためてGSOMIA破棄という事態が、日韓関係だけでなく韓国の政情をも違うステージに引き上げてしまったのだと痛感した。
とはいえ、筆者は、いまの韓国でクーデターが起きるかといえば、ハードルはまだ大きいようにも思う。
もちろん、韓国問題や軍事安全保障の専門ではない筆者が、スペシャリストの警鐘に対して真っ向から異論を挟むつもりはないし、一つのシナリオとして日本も備えは当然しっかりしておくべきとは思うが、一方で、もう少し見極めたい気もしている。夕刊フジあたりだと実態より大げさな見出しで、面白おかしく騒いでいる感もある(笑)。
一部メディアやネットでしばしば韓国のクーデター説が出るのは、いうまでもなく度々起きてきた歴史的事実があるからだろう。朴正煕らが1961年に蜂起してのちに政権を奪取した「5.16軍事クーデター」、1979年の朴大統領暗殺とその直後に起きた「粛軍クーデター」が代表的だ。
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5.16クーデターで蜂起した朴正煕少将(左端)ら:Wikipedia
これらは時の政権が異様に左傾化したことや、政権と軍部の権力闘争が引き金になっているが、その当時といまの韓国を比べると、民主化がそれなりに進んだことと、社会の安定をもたらす経済力が大きく異なる。特に5.16クーデターが勃発した60年代は、南北の経済力はさほど変わらず、むしろ70年代はじめは北のほうがGDPで上回っていたとされる。
今年は、のちに大統領になる全斗煥、盧泰愚らの軍人が蜂起した粛軍クーデターからちょうど40年が経つが、いまや韓国のGDPは2兆138億ドルと世界11位。北朝鮮のGDP(韓国中銀の推計値)は180億ドル程度とされるから(参照:産経新聞)、両国の格差はあらためて言うまでもない。世界的に見ても、軍事クーデターが起きるような国は経済情勢が非常に不安定な場合が多いことを考えても、韓国で度々軍人たちが蜂起していた時代の世情と違うのは、データを見ても明らかだ。
もうひとつ、仮に軍部内に、文在寅政権に叛意をもつ幹部たちが謀議したとしても、クーデターをやって国際的な支持が得られるかの算段がつかなければ決起をするのはただの無謀だ。冷戦時代なら、開発独裁の途上国にアメリカがCIAを使うなどして関与してきたが、いまや韓国はG20にも参加する政治的・経済的プレゼンスを有している。ロシアや中国ならいざ知らず、さすがのトランプ政権も、そんな「時代錯誤」のクーデター支援を露骨にやるとは考えにくい。
むしろ、心配なのは、政権の左傾化が著しい中、北朝鮮の謀略の手が及んでいる可能性のほうだ。
韓国通の宇山卓栄氏も以前アゴラで指摘しているが、自衛隊機へのレーダー照射という不測の事態は、韓国軍内部への北の工作が浸透しているという見方すら出ている。振り返れば、2008年には北朝鮮の女スパイが軍幹部を次々とハニートラップで籠絡して軍の情報が北側に漏れるという事件もあった(元正花事件)。
AbemaPrimeより
韓国軍の防諜体制は伝統的にお世辞にも強いとはいえない。元正花事件の頃よりは改善されたにしても、レーダー照射事件のような事態が起きると疑心暗鬼にならざるを得ない。文在寅政権下で、北の工作が軍幹部に再び浸透しているとしたら、クーデターを起こす前に骨抜きにされはしまいか。
今後を占うポイントとして筆者が注目しているのは、韓国で北朝鮮賛美やスパイ活動などを取り締まる「国家保安法」が見直されるかどうかだ。言論の自由への脅威として韓国国内の左派から、しばしば非難の対象となっているが、その左派が政権についた盧武鉉時代には、同法の撤廃をめざして頓挫したこともある。また、昨年秋には、与党「共に民主党」のイ・ヘチャン代表が見直し発言をして物議を醸した。
国家保安法は、民主国家の法規制として問題点もあるが、韓国と北朝鮮が国際法的にはまだ戦争状態(休戦)であることを考えると、終戦もしないで同法撤廃となれば、ますます北から政府要人、軍部への工作浸透が危惧される。個人的には、クーデターを心配する前に、GSOMIA撤廃の次は、国家保安法の成り行きに注目している。

新田 哲史   アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長
読売新聞記者、PR会社を経て2013年独立。大手から中小企業、政党、政治家の広報PRプロジェクトに参画。2015年秋、アゴラ編集長に就任。著書に『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックス)など。Twitter「@TetsuNitta」

北朝鮮のように貿易も旅行もできない国になる 日韓基本条約破棄で

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日韓基本条約は破棄できるか

2019年08月24日 20:30




韓国のGSOMIA破棄は常識では理解できないが、日本の経済制裁に経済で報復できないので、約束を破っていやがらせするぐらいしかないのだろう。日韓請求権協定は韓国大法院の「徴用工」判決で空文化したので、次に考えられるのは日韓基本条約の破棄である。
そういう声は、韓国の与党にも出てきた。朝鮮日報(韓国語版)によると今月、韓国の元統一相、李在禎氏はこう述べて「65年韓日協定体制の清算」を求めた。
今日も私たち国民が日本の侵略と植民支配が残した傷に対してどの謝罪も受けられずにいる最大の理由は、維新独裁政権[朴正熙政権]の屈辱的拙速な韓日基本条約と請求権協定で、最初のボタンを掛け違えたためだ。
もともと日韓条約は、日本でも韓国でも反対が多かった。韓国は日韓併合が国際法違反で無効だという立場から日本の植民地支配への賠償を要求したが、日本は日韓併合は有効だという立場だった。韓国では日韓条約に反対する学生運動が起こったが、それを押し切って1965年に日韓条約を結んだのが朴正熙大統領である。
この背景には、アメリカの圧力があった。60年代にアメリカはベトナムへの軍事介入を強め、韓国は外人部隊としては最大の延べ31万人の兵力をベトナム戦争に派遣した。
日本は「憲法の制約」で兵力を派遣できなかったので、韓国の資金援助で後方支援した。ベトナム戦争の時期に、韓国に導入された外資は合計40億ドル。その半分がアメリカだが、日本は日韓条約で官民含めて11億ドルを供与した。
つまり日韓条約は、ベトナム戦争に韓国人を動員し、その資金を日本が援助する体制だったのだ。これで韓国は世界の最貧国から中進国に飛躍し、これが「漢江の奇蹟」と呼ばれるが、その実態は外需依存の成長だった。
日本では5億ドルの経済協力という意味不明の「つかみ金」を出し、韓国内の資産の請求権53億ドルを放棄する日韓条約には反対が強かったが、アメリカの外圧で佐藤内閣が押し切った。

条約破棄で韓国が失うものは大きい

日韓併合が有効か無効かについては、日韓条約の第2条で「[日韓併合条約は]もはや無効であることが確認される」という玉虫色の表現になった。これを日本側は「かつて有効だったが日韓条約で無効になった」と解釈し、韓国側は「もともと日韓併合は無効だった」と解釈した。
このとき未払い賃金などは韓国政府が一括して受け取ることが決まったが、朴大統領はそれを国民にほとんど分配しないで政権内で使ってしまった。それに対する批判を恐れて、彼は条約の内容を国内に説明しなかったため、その後も韓国人が日本政府に対して損害賠償を求める訴訟がたくさん起こされた。
これについては盧武鉉政権が2005年に条約締結のときの外交文書を公開し、個人請求権は韓国政府が責任を負うことを認めたが、このとき慰安婦などを例外にしたことがその後の火種になった。
昨年の「徴用工」判決は、これをもう一歩進め、募集された労働者も「不法な侵略のもとでの強制動員」だから、その苦痛の慰謝料は請求権協定の対象外だとした。これは日韓併合がもともと無効だったという韓国の解釈の論理的帰結である。
この判決は請求権協定を無効としたわけではないが、日韓併合が不法な侵略なら、それに対する日本の賠償を明記しなかった日韓条約も請求権協定も不法だから改正すべきだ、という結論に至るのは、あと一歩である。もちろん日本政府は改正交渉に応じないだろうが、韓国がGSOMIAのように一方的に破棄することはできる。
ただ、これが脅しになるかどうかはあやしい。日韓条約を破棄して国交断絶すると、韓国は北朝鮮のように貿易も旅行もできない国になる。その経済的損失は、韓国のほうが日本より圧倒的に大きい。
日韓請求権協定で日本が放棄した韓国内の資産の所有権も、原状回復を求めることができる。1965年に日本が放棄した資産53億ドルは韓国のGDPの1.7倍だったので、今なら250兆円ぐらいだ。
日韓条約を破棄すると日韓地位協定も無効になるので、韓国内の日本人も日本国内の韓国人も国外追放できる。地位協定にもとづいて日本で特別永住権をもっている在日韓国人も、すべて永住権を失う。
どう考えても、韓国の失うものがはるかに大きい。これがさすがの文在寅大統領も日韓条約の破棄に言及しない理由だろう。それをいうと韓国内で「破棄しろ」という世論が巻き起こって、止められなくなるからだ。
それなら日本から「そんなに日本が嫌いなら日韓条約を破棄しましょうか?」と言ってみたらどうだろうか。政権が言うわけには行かないから、自民党議員がポロッと「失言」してもいい。韓国のマスコミが反応したら、文在寅政権はあわてて火消しに走るだろう。火が消えないと、とんでもないことになるが…

英米圏の初歩的な誤解を解くことが重要 日韓問題を混乱させる単純な錯覚

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日韓問題を混乱させる単純な錯覚

2019年08月26日 17:30



文在寅政権の暴走を支持する声は日本にはほとんどないが、英米圏では「お互い様」という意見が出てきた。ニューヨークタイムズの社説ワシントンポストのコラムは日韓の一方に肩入れするものではないが、そこには共通のパターンがある。NYTは朝鮮半島で「性奴隷」や「強制労働」が行われたと書き、ポストはこう書いている。
第二次世界大戦中に、日本は記録された歴史の中でもっとも恐ろしい残虐行為を行った。これには数十万人の「慰安婦」の性奴隷化や、朝鮮の学童に日本語の学習を強制して韓国文化を根絶する努力が含まれていた。
この残虐行為(atrocities)という言葉が曲者だ。慰安婦や日本語教育が残虐行為とは考えにくい。これは英米圏の読者には南京事件(Nanjing Atrocities)を連想させ、「日本軍は朝鮮との戦争で南京のような大虐殺をやった」と理解するだろう。
そう誤解するのは英米人だけではない。たとえば、みのもんたは昨年、AbemaTVで「僕なんか正直に思うんだけど、朝鮮半島と日本が戦争したということは事実だからね」と発言して物議をかもした。
日本人には、これはすぐ錯覚だとわかるが、英米人はそんな細かいことは知らない(関心がない)。NYTやポストのような一流紙が「日本軍のアジアでの残虐行為」と一くくりにすると、南京事件と朝鮮半島を「残虐行為」で結びつけることに(かなりの知識人も)疑問をもたない。
それに対して「朝鮮で残虐行為はなかった」と反論すると、英米の読者は次のような2種類の日本人がいると思うだろう。

○中国や朝鮮を侵略した残虐行為を認めて反省する日本人
×侵略戦争の残虐行為をまったく反省しない日本人

そして安倍首相は後者に含まれるのだ。

日本は朝鮮とは戦争できなかった

韓国人も「日本との戦争に勝利した」と考えているので、こういう誤解は歓迎だ。彼らの戦争は上海にあった亡命政権が一方的に宣言した「抗日戦争」だが、日本軍の「アジアに対する戦争責任」を糾弾する点では同じだ。
さらに問題をややこしくするのが、「南京大虐殺はまぼろしだった」などと主張する右派の人々だ。彼らにとって大東亜戦争は「自存自衛」の戦争なので、日本は朝鮮半島で悪いことはしていない。ここでも中国と朝鮮が混同されることが多い。
ここで大事な問題は、南京事件が「大虐殺」だったかどうかとか、日韓併合が「侵略」だったかどうかではない。第二次大戦で日本は朝鮮とは戦争しなかったという単純な事実である。朝鮮半島は日本の領土だったので、自国とは戦争できない。
朝鮮半島を舞台にした戦争はあった。日清・日露戦争は朝鮮半島の支配権をめぐる戦争であり、その意味では19世紀末以降、朝鮮人はずっと戦争の被害者だったともいえる。これは気の毒なことだが、強制労働とも慰安婦とも無関係である。
日本の戦争責任を問うのはいいが、どの戦争のことか明確にしないと、国際世論が日本を袋だたきにして外務省が屈服するという慰安婦問題の二の舞になりかねない。英米圏の初歩的な誤解を解くことが重要だ、というのがその教訓である。

スイートコーンとトウモロコシの区別が付いていない報道が多い G7サミット:空前の成功を理解しないNHKと朝日新聞

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G7サミット:空前の成功を理解しないNHKと朝日新聞

2019年08月27日 11:31




ヨーロッパのメディアはビアリッツ・サミットの予想外の大成功を讃えているが、NHKは「首脳宣言見送り G7 揺らぐ結束」という見当外れの見出しで朝からフェイクニュースを垂れ流している。朝日新聞もG7「『首脳宣言』見送り」と同じようなもの。どちらも、事態が急変したのに予定原稿をそのまま修正しなかったのだろうがお粗末の極みだ。
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G7及びアウトリーチ招待国首脳との集合写真撮影(官邸サイトより:編集部)
ロシアや中国が冷淡なのは参加していないのだから当然だし、アメリカのリベラル系メディアは、トランプ大統領の得点になることは絶対に報道しないから、悪くいわないのだから大成功だということは、安倍政権に対する日本のマスコミと同じだ。
なぜ、こんなことになったかというと、マクロン大統領が、期待値を下げるという高等戦術をとったからで、宣言を採択しないということにしたのもその一環だ。これをドイツのZDFもマクロンとフランス外務省の外交手腕を絶賛している。
結果的には、サミット本体だけでなく、同時に行われた様々な2国間の首脳会談も含めて信じがたいほどの大成功だった。
とくに、イラン問題での進展が大きかった。イランの外相がビアリッツに招待され、各国首脳との会談はなかったが、フランスからサミットの議論の説明を受け、その結果は首脳たちにフィードバックされた。
その結果、会議後のマクロン・トランプ両大統領の記者会見では、イランのロウハニ大統領とトランプ大統領の首脳が数週間以内に会談する話し合いが進展していることが明らかにされた。また、「イラン核合意」を新たに結び直すような方向でアメリカの復帰を図ろうという方向になったようだ。
また、その議論のなかで安倍首相の努力も評価することが忘れられず、ヨーロッパのニュースでもたびたびマクロンのイニシアティブと並んで取り上げられていた。
このところ、隙間風が吹いていると言われていたが、マクロンとトランプの関係はもともと良好だった。トランプが次期サミット議長として出席したサミット終了後の記者会見では、和気あいあいであった。通訳もなしでまったく2人だけでの会談も行われたとのことで、多くの問題が解決された。
とくに、GAFAなどへの課税について、IT企業などだけでなくIKEAなどの多国籍企業への課税をOECDで案をまとめて実施することで一致し、それまでは、フランスが実施する3%の課税をトランプが容認するという信じられない展開となった。
トランプは、報復として予告していたフランスのワインへの課税も見送られ、トランプは「アメリカのファーストレディーはフランスのワインが好きだ」という始末。
サミットの意義についても、「価値観を同じくする国がオープンに議論をするのはいいことだ」といい、マクロンもトランプも「時間を無駄にするのが嫌い」と実質主義を強調した。
また、メルケル首相とトランプの会談も珍しく大成功で、トランプはこのまえドタキャンしたベルリン訪問を約束し、「私はドイツ人の血を引いている」とご機嫌。
さらに、安倍首相とは、貿易協定で大筋合意に成功し、また、トウモロコシの緊急輸入の約束を得て、予定されていなかった共同記者会見を開いたので、日本の記者団は間に合わずアメリカ記者団だけを相手になった。
日本にとって大事なコメの関税は維持して、「中国に売れなくなった米産トウモロコシ輸入」という取引成立。コメはトランプが勝てるはずないカリフォルニア州の問題だからトランプにとってはどうでも言い訳だ。トランプの選挙と日本の利益とで取引成立したということか(日本では生で食べるスイートコーンは国産がほとんどだが、量的にはネグリジブル。飼料・原料用のトウモロコシはもともとほぼ全量輸入なので国産トウモロコシには被害なし。スイートコーンとトウモロコシの区別が付いていない報道が多かったのは困ったものだ)。
サミットではマクロンの周到な作戦で昨年のように深刻なアメリカと他国の対立にならなかったので、そういう意味では安倍首相の出番はなかったが、各国のメディアも常に安倍首相にスポットを当てており、存在感を確保したことが見て取れ、ほとんど外国メディアの画面に日本の首相が映らない時代を知っているだけに感慨深かった。
そして、来年のサミットはマイアミと言うことになった。おそらく、トランプのゴルフ場も使われることになるのではないかといわれている。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

基本条約を破棄するなら経済協力として得たものを今日の価格で返してもらうしかない  日韓基本条約を廃棄するとどうなるか 

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日韓基本条約を廃棄するとどうなるか

2019年08月28日 20:00



8月24日に池田信夫氏が、「日韓基本条約は破棄できるか」という寄稿をされているので、それを受けて、私の見解を「日韓基本条約を廃棄するとどうなるか」という形でまとめさせていただいた。
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バンコクで会談する河野外相と康外相(2019年8月1日、日本外務省公式Facebookから)
韓国側が間違っているのは、1965年の日韓基本条約や日韓請求権協定は、韓国が苦しい時期だったので、「維新独裁政権の屈辱的拙速な」妥協をしたので、粘り続けたらもっと取れたと思っているらしいことだ。
しかし、日本側からすれば、ベトナム戦争で韓国に協力させたいアメリカから圧力をかけられるし、李承晩ラインで拿捕された漁船員を人質にとられているし、さらに、北朝鮮に比べて貧しかった韓国をバックアップするために大甘だったということであって、いまなら、あんな大盤振る舞いするはずないのである。
日本でも政府は社会党や朝日新聞まで含めて弱腰を追及されていたのである。とくに、回を改めて詳細を書くが、そもそも、ポツダム宣言を受諾したことが、韓国の速やかな独立、在韓日本人の強制帰国、財産没収につながるなどと日本側では考えていなかったのである。
フィリピンのアメリカ人、インドの英国人、ジャワのオランダ人、セネガルのフランス人だってそんな理不尽な目にあっていないのである。
逆に日本人が韓国から追放されたのなら、在日の韓国人も日本から帰国するのが当然だ。少なくとも、普通の外国人として扱われる、つまり、生活保護などは受けられない、犯罪を犯せば追放される、外国人に認められていないことはできない、帰国するときに無制限に財産を持ち出せないなど当然というはずだった。
だから、基本条約を破棄するなら経済協力として得たものを今日の価格で返してもらうしかない。利子を付ければいいというものですらない。なぜなら、当時は外貨事情も苦しいなかで無理をしたのであって、表面的な金額を大幅に超える負担だったのだ。
また、在日の人々に認めた「特別永住権」も解消するしかない。これまで、半世紀以上にわたって認めてきた代償もなんらかのかたちで韓国政府が支払うべきだろう。
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日本企業を訴えた元徴用工の原告団(KBSより:編集部)
「徴用工」や「慰安婦」の分まで含めた個人請求権は日本が個別に応じようかというのを、韓国側が一括してもらうことを懇願したのでそうしたのだが、日本側がそういう軍事政権の要請に応じたから、個人に十分に渡らなかったのであって、それを予想しなかった日本政府が悪いとかいう人もいるが、これも勘違いだ。
ここのところを理解できない人が多いのだが、こういうことだ。韓国では1949年から53年まで朝鮮戦争が戦われて、南北合わせて人口の6分の1にあたる500万人以上が死んで、財産の被害も天文学的なものになった。
そんななかで、日本による被害者にだけ巨額の補償など出ると国民が納得しなかったのだ。だから、一言で言えば、国民全体で「平等」に分けたのだ。
また、このつきの経済協力は日本から購入したりする紐付きが多かったが、それは、当時はそれが常識だったというだけだ。そもそも外貨事情からいってもそうでなければ、大幅減額が当然だった。
そんなことは少し考えれば分かるはずだ。また、日韓の政治家などがピンハネしたのでないかという人もいる。全くそういうことがなかったのは言わないが、この経済協力の結果として実現した「漢江の奇跡」をみれば、おおむね賢い使われ方がされたと言えるだろう。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

捏造だらけの韓国史 - レーダー照射、徴用工判決、慰安婦問題だけじゃない -

捏造だらけの韓国史 - レーダー照射、徴用工判決、慰安婦問題だけじゃない -

  • 著者八幡 和郎
  • 価格¥ 1,500(2019/08/28 08:06時点)
  • 出版日2019/01/28
  • 商品ランキング47,763位
  • 単行本(ソフトカバー)303ページ
  • ISBN-104847097610
  • ISBN-139784847097614
  • 出版社ワニブックス

免罪符・韓国裁判所。国際条約無視の大統領。火病左翼政権。日韓条約破棄なら日本資産の返還要求が可能

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日韓条約破棄なら日本資産の返還要求が可能(特別寄稿)

2019年08月29日 11:40



半島からの日本人追放がそもそも国際法違反

日韓請求権協定をめぐる不幸の始まりは、朝鮮半島の独立が日本の了解なく決められ、在韓日本人が不当に退去を命じられ、財産も没収されたことにあることを前提に論じられるべきだ。
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日本統治時代の京城府(現ソウル)南大門通り(Wikipedia)
もちろん、日本が受諾したポツダム宣言には、「日本国の主権は本州、北海道、九州および四国と我らの決定した島嶼に限定されるべきだ」とあるから、朝鮮の領有を続けられないことは仕方ないことだった。
しかし、具体的にどのように分離しどういう国にするかについては、将来において結ばれる講和条約において決定するべきものと考えるのが国際法の常識であったし、それまでは、日本の統治機構が存続すべきでもあった。
さらに、朝鮮半島が日本の領土でなくなったとしても、日本人が退去したり、財産を奪われるべき理由などなにもなかった。
しかし、連合国は日本の賠償の一環としてそういうことをさせたらしい。ただし、そのかわりに、純然たる賠償は連合国に対してしないで済んだのだから、日本にとって経済的に損だったかどうかは別なのだが、在留邦人にとっては災難だった。独立した韓国とのあいだで複雑な問題をいまだ生じさせていると言うことになる。
ここでは、終戦ののち、日韓会談が始まるまでの経緯を正確に追っていこう。

日本の賠償をめぐる考え方の変遷

このころ、アメリカから1945年11月に来日したポーレー賠償調査団は、12月に中間報告書を発表し、日本の工場設備の撤去とアジア諸国の戦後復興への転用を主張。それは、日本の主要産業部門の半分を賠償指定し、鉄鋼生産能力を1930年と同一水準の年産250万トンに抑えるというものだった。
また、ポーレーは「かつて、朝鮮の資源と人民を搾取するために用いられた日本の工場・施設の、いかなる部分を日本本土から移転するか研究すべし」と主張した。
しかし、この賠償案はマッカーサーに反対され、冷戦が進む中で実現することはなかった。
1947年1月、来日したストライク調査団は、ポーレー案の中止と純軍事施設以外の一般工業部門の撤去を大幅に緩和した新しい賠償案を立案した。そして、1948年1月以降、GHQ賠償局の指導で1億6500万円に相当する工作機械などが軍工廠から撤去され、中国・フィリピン・オランダ・イギリスに搬出された。
そして、1948年5月の実業家のジョンストンを団長、陸軍次官ドレーパーらが加わった使節団の報告書で、6億6200万円(1939年価格)の賠償額を提示し、翌年には均衡財政、終戦処理費の削減、公定価格の修正、徴税の強化、為替レートの設定、民間貿易の拡大、軍用交換レートの改定、集中排除法の緩和などを内容とするドッジ・ラインが示された。
こうして、アジア諸国の工業生産力の平準化路線から、日本の復興を通じてアジアの経済を振興しようという現実路線に転換され、同時に主要連合国は賠償請求権を放棄していった。

終戦でも帰国するつもりがなかった在韓日本人

終戦時に朝鮮には70万人余の日本人が住んでいた。彼らにとっても、朝鮮人にとっても、8月15日の玉音放送は意外なもので戸惑いをもって迎えられたが大きな混乱はなかった。
ただ、8月15日の朝に朝鮮総督府政務総監・遠藤柳作は、穏健派の独立運動家、呂運亨を招いて、朝鮮建国準備委員会を設立させた。 16日には安在鴻が京城放送局のラジオで韓国民に委員会の意志を放送し、独立準備のようにみえた。
しかし、『京城日報』 は 「かかる間題は、 当局は目本帝国の名に於て将来四国代表との間で折衝決定すべきものであり、 個々の団体の関与すべき筋合のものではない」(8月20日)、「朝鮮の独立には極めて多大の前提条件を必要とするが、なかんづく日本の停戦に関する処理が来だ解決されず、 右に関する権限を附与されたマッカーサーと日本帝国代表との間に話し合いが未だ開始されてなぃ今日に於ては、 独立政府の樹立は未だ議題たり得なぃのである」(8月21日付)、「朝鮮に於る帝国の統治権は厳として存し」、「朝鮮軍は厳としてとして健在である」とし、治安を乱すなら武力行使する(8月20日付)とした。
ただ、 8月24日の外務次官から朝鮮政務総監に充てられた指示では、「 朝鮮二関スル主権ハ、 独立間題ヲ規程スル講和条約批准ノ日迄法律上我方二存スルモ、 カカル条約締結以前二於テモ、 外国軍隊に依リ占領セラルル等ノ事由に因リ、 我方ノ主権ハ事実上休止状態に陥ルコトアルべキコト」とした。
8月11日、 北緯38度線以南は米軍が、 以北と満州はソ連軍が担当することになった。
8月26日ソ連軍が平壊に進駐し、米軍は9月8日に仁川上陸。 9月9日朝鮮総督府で日米間の降伏調印式が行われた。降伏交渉はハリス代将と速藤政務総監の間で行われ、朝鮮総督府で行われた降伏調印式には米国からは在朝鮮米国軍司令官ハツヂ中将、 キンケード海軍大将、 日本からは阿部総督、上月朝鮮軍司令官らが著名し、日の丸が降ろされ、星条旗が上がった。
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釜山日本人世話人会の事務所(国立平和祈念展示資料館HP)
このころ在留日本人は、内地に帰りたいという人もいたが、主流は残留だった。京城日本人世話会の伊藤事務局次長は呆然自失、不安と悔悟に暮れるよりも、我らは朝鮮語を習つて、新朝鮮に新たなる協力をなすぺきである」と述べ、朝鮮語講習会が組織され盛況だった。なかには、独立を見越して、帰化したいという者もいた。
こうした世話人会は、引揚者の荷物預託事務、不動産売買事務、 日本人財産管理などの体制を整備するとともに、朝鮮の独立後には、日本人居留地を建設しようとしていたらしい。

予想外の退去命令と財産没収

しかし、9月14日にトルーマン大統領が 「朝鮮滞在の日本人は放逐する」とラジオで方針を明らかにし、10月13日からは、単独帰還軍人の引揚げが開始され、軍人復員者、一般民の引揚げが米軍の指揮の下で行われることになった。
最終的には、12月の法令33号により全面的な日本人撤退が強制されることになった。
9月25日の法令第2号 「敵産二関スル件」では、 8月9日以後財産処分禁止と現状維持義務が命じられ、 1o月の連合国総司令官令では、引き揚げる際の持ち出し財産と荷物の制限が決められた。
民間人は一人当り千円に限り港で交換でき、 金と銀、 有価証券、 金融上の書類、銃、カメラ、宝石、美術品、收集切手などの持ち出しが禁止され、携行荷物も自分で持ち運べるだけに限定された。
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船に乗る引揚者(国立平和祈念展示資料館HP)
しかし、米軍施政下の地域では、それほど大きな混乱はなく、内地人と朝鮮人のあいだで別れを惜しむ光景も見られた。一方、北ではソ連軍が日本人にも朝鮮人にもひどいことをしたことがよく知られた通りだ。
当初は5年の信託統治ののちに政府が組織されるはずだったが、米ソ共同委員会はl947年9月に決裂、米軍占領地域では国連臨時朝鮮委員会の監視下で1948 年5月10日単独の総選挙が実施され、7月に国会で憲法が制定され、 8月15日に韓国政府が樹立された。 他方、ソ連軍占領下の38度線以北では、最高人民会議の選挙を経て、9 月9日に北朝鮮政府が樹立された。

日本政府の反撃

こうした朝鮮半島での米軍の独走になすすべがなかった日本政府だが、1907年にハーグで調印された「陸戦の法規慣例に関する条約」の第46条に「私有財確はこれを没収することはできない」とあるのを根拠に抗議し、返還を要求する。
しかし、韓国政府成立後の1948年9月に、「米韓財政及び財産に関する協定」の第5条「大韓民国政府は、在朝鮮米軍政庁法令第33条により帰属した前日本人の公有または私有財産に対し、在朝鮮米軍政庁がすでに行なった処分を承認かつ批准する。本協定第1条および第9条により、米国政府が取得または使用する財産に関する保留のものを除き、 現在までに払い下げられない帰属財産(中略)を次のとおり大韓民国政府に委讓する」とされたことによって韓国政府に委譲されてしまった。
日本政府部内では、講和条約交渉に臨む準備と言うこともあり、理論武装を進めた。外務省に設置された「平和条約問題研究幹事会」は1949年12月に。「割譲地に関する経済財政的事項の処理に関する陳述」をまとめた。
論点は、①後進地域だった朝鮮の近代化は日本の貢献のお陰であることは広く国際的にも認められてきたし、そもそも、「持ち出し」であった。②日本人の私有財産の没収は国際慣例上、異例である。③日韓併合は国際法と慣例において普通の方法で取得されたもので世界各国に認められていたといったものだった。
また、大蔵省の在外財産調査会は、京城帝国大学の教授だった鈴木武雄らに委嘱して、経済発展、教育の普及、財政資金の投入などを引き合いに出して、カイロ宣言が使った「奴隷状態」という言葉に厳しく反論した。また、終戦の時点での日本財産は47億ドルだったとして、将来の交渉に備えた。

サンフランシスコ講和会議

1951年に、サンフランシスコ講和会議が開かれた。このときに、韓国の李承晩政権は、亡命政府の存在を理由に戦勝国として参加しようとした。米国は戦勝国としてかどうかはともかく、参加には肯定的だったが、英国と日本が猛反対した。つまり、日本の一部であった韓国は、日本と戦ったわけでないというわけであり、その言い分が通った。
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サンフランシスコ平和条約に調印する吉田首相(Wikipedia)
まず、領土については、以下のように書かれた。韓国は竹島についても書いて欲しかったのだが、認められなかった。
第二条 (a)日本国は、朝鮮の独立を承認して、済州島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
ついで、在外資産について以下のように書かれた。
第四条 (a)この条の(b)の規定を留保して、日本国及びその国民の財産で第二条に掲げる地域にあるもの並びに日本国及びその国民の請求権(債権を含む。)で現にこれらの地域の施政を行つている当局及びそこの住民(法人を含む。)に対するものの処理並びに日本国におけるこれらの当局及び住民の財産並びに日本国及びその国民に対するこれらの当局及び住民の請求権(債権を含む。)の処理は、日本国とこれらの当局との間の特別取極の主題とする。第二条に掲げる地域にある連合国又はその国民の財産は、まだ返還されていない限り、施政を行つている当局が現状で返還しなければならない。(国民という語は、この条約で用いるときはいつでも、法人を含む。)
(b)日本国は、第二条及び第三条に掲げる地域のいずれかにある合衆国軍政府により、又はその指令に従つて行われた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する。
最初は、(b)はなかったので、日本の韓国内の資産については、「日本国とこれらの当局との間の特別取極の主題とする」。つまり、日本と韓国との話し合いで決めろと言うことであった。
そこで、韓国から要望があって、(b)が挿入され、これによって、米軍による日本資産の接収が有効になった。
これについて、国会で社会党の曾根益氏の質問に外務省の西村熊雄局長は、「第四条につきましては日韓で話し合いをする場合に、日本にとっては、なんと申しましょうか、話し合いの範囲とか、話し合いの効果というものが大いに制約されることになる条項でございまして、面白くないと存じております」と答弁している。
つまり、全面的に日本資産を放棄させられたとはいえないが、主張に制約が出るだろうということだ。
ただし、サンフランシスコ講和条約は賠償については、日本にそこそこ寛大なもので、以下のようにされていた。
第十四条 (a)日本国は、戦争中に生じさせた損害及び苦痛に対して、連合国に賠償を支払うべきことが承認される。しかし、また、存立可能な経済を維持すべきものとすれば、日本国の資源は、日本国がすべての前記の損害又は苦痛に対して完全な賠償を行い且つ同時に他の債務を履行するためには現在充分でないことが承認される。
第1次世界大戦のベルサイユ講和条約でのドイツのように、支払い能力を無視した賠償は否定されたわけで、第四条(b)は不満だったが、全体としては、まずまずだったわけである。

日韓会談における日本の最初の主張

1951年の条約締結を受けて、日韓の予備会談が始まったが、それに先だって、池田勇人大蔵大臣は、国会で、①韓国はサンフランシスコ講和条約の調印国でないので賠償はしない。②日本資産の処分は第四条によって認めたが、日本人の財産については、今後、韓国と話し合うとした。
つまり、とりあえず、米国による接収と韓国政府への移管は有効だが、それに補償する権利は放棄しないと言うことだ。そして、日韓第1次会談は1952年2月に開始された。日本側の代表は松本俊一外務省顧問(元事務次官)だった。
このときに、「インドは独立したときに、インド国内にあったイギリス人の財産を認めた」「敵の財産の処分を行ったときに、その財産に対する元の所有権は消滅しない。たとえば、売却代金に対しては日本側の所有者が請求権をもっている」という方針だった。
これに対して韓国側は、「日本が真に誠意を示そうとするなら(韓国に対する)請求権は撤回しろ」と主張した。
それに対して、日本側はとりあえず、そうした問題は棚上げにして、合意できる問題から合意したらどうかと提案したが、韓国側が拒否したので、日本側は会談打ち切りを提案。韓国側も日本が請求権を撤回しない限り話し合いを続ける意味がないとしたので、日本は無期延期を提案し、韓国側もこれに合意するしかなかった。
これが、日韓会談における日本側の日本資産請求権についての出発点である。そして、これが話を通じて妥協が行われ、1965年の日韓請求権協定に結実しているのだから、もし、韓国側が日韓基本条約や請求権協定を否定するなら、日本側もこの1952年の主張に戻るしかないということになってしまう。
なお、こののち、サンフランシスコ講和条約第四条(b)の解釈について、1957年に米国政府が「解釈」を出している。
その内容については、また、機会を改めて紹介するが、「日本国は、これらの資産またはこれらの資産に関する利益に対する有効な請求権を主張することはできない。もっとも、日本国が平和条約第四条(b)において効力を承認したこれらの資産の処理は、合衆国の見解によれば、平和条約第四条(a)に定められている取極を考慮するに当たって関連があるものである」というものであった。
つまり、直接に返還を要求したり、その代金をよこせということはできないが、最終的な請求権交渉にあたって、それが韓国政府に与えられたことを考慮することは可能だということである。
そして、これを日韓両国は受け入れた。それが何を意味をするかは微妙である。それに拘束はされるのか、交渉を進めるために受け入れる判断をしたので、交渉の結果である条約を韓国が否定するなら日本はこれも拘束されないのか、そもそも、サンフランシスコ講和条約に基づいた話し合いの結果において結ばれた条約を否定するなら、日本は何も拘束されないのか、なかなか難しいところだ。
いずれにせよ、いったん結んだ条約を実質的に否定して、裁判所の決めたことだから知らないという大統領が登場するなどというのは想定外なのである。

(参考文献)
日韓条約と国内法の解説 附 日韓条約関係資料』(編集 外務省外務事務官 谷田正躬 法務省入国管理局参事官 辰巳信夫 農林省農林事務官 武智敏夫 時の法令別冊 大蔵省印刷局発行)
検証 日韓会談』(高崎宗司 岩波新書)
朝鮮における終戦と引揚げ』(李炯 長崎県立大学国際社会学部研究紀要 第2号 7-16 2017年12月)

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

捏造だらけの韓国史 - レーダー照射、徴用工判決、慰安婦問題だけじゃない -

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玉ねぎ・チョ・グクも非難。韓国紙が連日猛批判!禁断のベストセラー『反日種族主義』の中身

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韓国紙が連日猛批判!禁断のベストセラー『反日種族主義』の中身

2019年08月29日 06:01



韓国では今『反日種族主義-大韓民国の危機の根源』なる本が10万部超のベストセラーらしい。共著者は「大韓民国の物語」を書いた落星台経済研究所理事長で李承晩学堂会長の李栄薫(イ・ソンフン)ソウル大教授、同研究所理事の金洛年(キム・ナクヨン)東国大教授、そして先ごろ国連で徴用工に関する「事実」を発言した同研究所の李宇衍(イ・ウヨン)氏など6名の研究者だ。
この事態に与党「共に民主党」の機関紙?ハンギョレが実に判り易い逆上ぶりを露呈している。
11日の「書評」では「光復節(*8月15日)」を前に
日本の植民地支配に対する一般の人々の常識が間違っており、強制徴用に対して“植民地支配の期間に多くの若者が金を目当てに、朝鮮より進んだ日本に対する“ロマン”を自発的に実行しただけ“と主張する本に出合うとは、..私たち内部の葛藤がいかに深刻であるかを象徴的に示している。
と嘆くことしきりだ。
26日には数々の疑惑で目下話題沸騰のチョ・グク氏が5日にフェイスブックで「附逆(反民族的)・売国親日派という呼称以外に何と呼ぶべきか、私には分からない」と同書の著者を批判したこと、及びこれに対し著者6人が20日、「数十年間の研究を盛り込んだ本には根拠を持って批判しなくてはならない、むやみに“著者が国を売った”と言うのは明らかな侮辱だ」とチョ氏を告訴したことを報じた。
加えて、「…この本の日本語版出版で日本人の誤った歴史認識がより深刻になり、事実に基づいた韓日関係正常化がさらに難しくならないかと心配になる」との匿名評論家の話やハン・チョルホ東国大学教授の次のような韓国歴史教科書の記述丸写し?の旧来型見解を載せている。
日本の右翼はいまだに「近代化されていなかった韓国を近代化させ、西欧帝国主義の脅威からも保護してあげた」という論理を展開しており、そうした論理に同調する韓国の学者がいるのはこの上なく嬉しいだろう。しかし、日本が近代の文物を持ちこんだのは、朝鮮人のためではなく、より効率的に収奪するためだった。このように根本的原因ではなく表面的現象だけを見ると、歴史的評価を間違って下すことになる。
27日の社説は「…開いた口が塞がらない。著者たちの反歴史的かつ没理性的行動はもとより、恥辱の歴史を省察・自覚できない一部の退行的流れについては、懸念せざるを得ない。…右翼の“嫌韓”攻撃の良い素材として使われるだろう。結局“実証的”研究という名の下、民族を売るようなことではないか。自問してもらいたい」として次のように述べている。
「韓国のうそ文化は国際的によく知られている事実」という文言で始まる同書は、いきなり「種族主義」という表現を使い、韓国人を“反日”に執着する未開集団であるかのように描いている。日帝による徴用に強制性がなかったという主張も、あきれてものが言えないものだ。1944年徴用令が始まる前には「募集と官斡旋」方式だったため、強制力がないというのが彼らの論理だ。
しかし、延世大学のイ・チョルウ教授が論駁するように、「搾取を目的に脅しや武力行使、詐欺などで人を募集」した場合は、人身売買と見なすのが国際的に認められた概念だ。日本の学者はもちろん、韓国の最高裁判所(大法院)も徴用の強制性を公認しているだけでなく、被害当事者たちが生々しく証言しているのに、これ以上何を言う必要があるだろうか。
「日本の学者はもちろん」と言ったところで、ハンギョレには頻繁に寄稿するものの、日本では殆ど相手にされない和田春樹氏や山口二郎氏のことだろう。そして27日のもう1本の記事は、イ・ウヨン氏の国連シンポ出席は、国際キャリア支援協会の藤木俊一氏(テキサス親父日本事務局代表の方が日本では判り易い)の支援を受けたものとの、まるでそのことに何か問題があるかのような誹謗中傷記事だ。
そこで「反日種族主義」の中身だが、これらハンギョレ記事で凡その見当はつく。日本語版は「文学や芸術関連の書籍を主に出版する日本の中堅出版社」の「文藝春秋から年内出版予定」と26日のハンギョレにある。早く読みたいが、概略がネットで紹介され、李栄薫教授の李承晩学堂なるサイトでも凡その内容が推測できる。
ネットの紹介には、同書が「プロローグと本文3部、エピローグで構成」され、第1部は「種族主義の記憶」(反日種族主義の起源を説明しつつ「土地・米収奪説」、「強制動員説」等に反論)、第2部は「種族主義の象徴と幻想」(反日種族主義の形成と拡散および白頭山神話、独島問題と亡国責任問題、過去の歴史清算問題)と題されているとある。
第3部の「種族主義の牙城、慰安婦」では、反日種族主義の中核である「日本軍慰安婦=強制動員された性的奴隷説」に反論し、「朝鮮王朝のキーセン制が日帝によって公娼制に再編されたこと、それを戦争期に日本軍が軍慰安所として活用したことが日本軍慰安婦制度であるとする」という。
第1部の「強制動員説」では李宇衍氏の研究が用いられ、「土地・米収奪説」と第2部の「反日種族主義の形成と拡散」では李栄薫教授の「大韓民国の物語」(文藝春秋:2009年)での主張が述べられていると思われる。筆者は前者について「国連シンポで主張された『朝鮮半島出身労働者』研究の中身」と題しアゴラに書いたが、そこで紹介した研究が詳述されているはずだ。
李栄薫教授の主張は紙幅の関係で「大韓民国の物語」の「さわり」と「目次」を紹介する。なお李栄薫教授が批判する金大中・廬武鉉・文在寅と受け継がれる時代認識は、先ごろ外国特派員協会に登壇した李泳采教授の発言を纏めた拙稿「事態を履き違えた反日攻勢の激化:破滅に向かう文在寅の時代認識」を予めご一読願う。これの「逆」が李栄薫教授の時代認識と考えられよう。
廬武鉉失脚の翌年に書かれた「大韓民国の物語」で李栄薫教授は、「先ず批判の標的を明確にしておくため」として、1979年から89年にかけて全六巻が刊行された「解放前後史の認識」(以下、「認識」)なる本を次のように紹介する。
解放前後史を民族主義の観点から解釈した決定版で・・1980年代から90年代に大学に通った韓国人に大きな影響を及ぼし・・六巻を合わせて百万部が売れ…在野時代の廬武鉉氏も耽読し、…(その政権の)要所に陣取るいわゆる三八六世代という政治家の現代史認識はこの本を通じ形成されました。
(廬武鉉)政権が・・甚だしくは1984年の東学農民蜂起までを対象にして、何と十六にも達する特別法を制定し、いわゆる「過去史清算」を前面に押し出していることも、同書を読むことによってその歴史的な背景を理解することができます。
つまり「認識」の否定こそが「大韓民国の物語」の目的ということだ。そしてその目次は以下だ。
第一部 歴史への視線

1 食い違う歴史認識
2 民族主義の陥穽から抜け出よ

第二部 文明史の大転換
3 李朝はなぜ滅んだのか
4 「植民地収奪論」批判
5 植民地進化論の正しき理解
6 協力者たち
7 日本軍慰安婦問題の実相
8 あの日、私はなぜあのように言ったのか
9 日帝がこの地に残した遺産

第三部 くに作り
10 「解放」とはどのようにもたらされたか
11 分断の原因とその責任
12 建国の文明的な意義
13 李承晩大統領を直視する
14 反民特委を振り返る
15 朝鮮戦争はなぜ起こったか
16 1950年代の再評価
17 新たなる開発の時代のために

終言:歴史からの自由を
「認識」が6巻で100万部なら1巻当たり16万部、目下10万部の「反日種族主義」がそれを超える暁に、果たして韓国は「歴史からの自由を」取り戻すのだろうか。いずれにせよ日本での出版が待たれる。

高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。


日本国内や世界に向かっては彼らの反日が不合理であることの認識を深めさせるように努力することも大事 反日国家(中韓朝)に対する賢い向き合い方 

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反日国家(中韓朝)に対する賢い向き合い方

2019年08月31日 11:30



大韓民国(韓国)は反日国家である。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)もそうだし、中華人民共和国(中国)もそうだが、それぞれ、意味は少しずつ違う。
http://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2019/08/12796fef6028110068ddbf5b749b37fe.jpg
Wikipedia、韓国大統領府インスタグラム、朝鮮中央通信より:編集部
中国共産党は、中華民国時代に国民党の政権と内戦を戦い、西安事件によって内戦を停止し抗日戦争をともに戦うことを、蒋介石に承知させた。そして、終戦後は双十協定を経てその破綻ののちの内戦で建国した。
この成立史がゆえに抗日が建国の原点のひとつになっており、それがゆえに、靖国問題などでも強硬な立場をとる。
北朝鮮は、その憲法の序文で「金日成同志は不滅のチュチェ思想を創始し、その旗のもとに抗日革命闘争を組織、指導して栄えある革命の伝統を築き、祖国解放の歴史的偉業を成し遂げ、政治、経済、文化、軍事の各分野において自主独立国家建設の強固な基礎を築き、それに基づいて朝鮮民主主義人民共和国を創建した」としている。
パルチザンが原点であるが、建国は1948年という立場である。
韓国の憲法は、「悠久な歴史と伝統に輝く我々大韓国民は3・1運動で成立した大韓民国臨時政府の法統と、不義に抗拒した4・19民主理念を継承し、・・・1948年7月12日に制定され8次に亘り改正された憲法を再度国会の議決を経って国民投票によって改正する」としている。
つまり、日韓併合を無効という認識のもと、1919年の三・一運動ののちに上海で成立した大韓民国臨時政府を前身として、1948年に李承晩による建国で実体化され、李承晩を倒した1960年の革命を民主国家としての節目でであると規定している。
国際法の世界では、1910年の日韓併合条約は有効であると解釈されている。日本による強い圧力のもとで締結されたものだが、韓国側の同意がなかったわけでない。それを無効というなら、世界の歴史も国際秩序も大混乱になる。
日本国憲法の制定も押しつけには違いないし、強固な保守派のなかには無効だという人もいるが、無効だとはいわないが押しつけだから改正したいというのが改憲派の大勢なのと同じだ。
いずれにしても、韓国、北朝鮮、中国の三か国はその成立過程から、反日国家としての性格をもっているというのは、忘れてはならない。そして、それがゆえに、彼らは反日を看板に手を組みやすいということもある。
だからといって、日本が彼らのいう歴史認識や正義をみとめなくてはならない理由はないが、成算のない愚かな戦争をした結果、なんとも困った国際秩序ができてしまって、日本はそのなかにあって、この逆境を跳ね返すためには、硬軟おりまぜて、よほど賢く反撃しなくてはならないという冷静な認識は必要だ。
場合によっては、適度に反省を口にするとか、相手国の反日的言動をあまり気にせずに「立場があるだろう」と聞き流すほうがいいこともある。しかし、逆に、そういう反日が国是の国とはまっとうな対等の付き合いは無理なのだから友好を期待しないほうがいいということだってあるし、相手国に言うだけ無駄だが、日本国内や世界に向かっては彼らの反日が不合理であることの認識を深めさせるように努力することも大事なのである。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

捏造だらけの韓国史 - レーダー照射、徴用工判決、慰安婦問題だけじゃない -

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  • 出版社ワニブックス

金大中までの大統領は、日本統治時代を自分で経験してた 文在寅よりましな盧武鉉、李明博、朴槿恵の反日

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文在寅よりましな盧武鉉、李明博、朴槿恵の反日

2019年09月01日 06:00



これまでも韓国の大統領の反日言動はされていたが、文在寅大統領のはとくにひどいように見える。そのあたりを少し分析的に見ていこう。
すでに書いたように、韓国はその成り立ちからして反日が「国是」のようになっている。しかも、歴代の大統領はつねにエスカレートさせている。前任者より一歩進まないと後退させたとみられるからだ。
とはいえ、かつては、任期の初めは融和的な姿勢が目立ち、だんだん、反日色を強める傾向があった。それは、就任早々は支持率も高く余裕があるので、日本に融和的な姿勢を見せて実利を得ることで基盤強化が図れると思ったのではないか。
それに対して、日本側は融和姿勢への受け止めが必ずしも上手でなく、むしろ、厳しく出た方が妥協的になるような傾向もあったと思う。
金大中については、すでに解説したことがあるので、今回は盧武鉉、李明博を中心に朴槿恵まで三人の大統領の対日政策を振り返ろう。
http://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2019/09/Roh_Moo-hyun_cropped.jpg
盧武鉉元大統領(Wikipediaより:編集部)
盧武鉉大統領(2003~2008年)のときは、最初は、「私たちはいつまでも過去の足かせに囚われているわけにはいかない」とし、当時の小泉純一郎首相との間でシャトル首脳会談を創設した。
この時期の盧武鉉による反日は、日本に対するよりは韓国内の保守派に向けられた。それがゆえに、当初は日本に直接の被害はなかったのである。
つまり、2005年には、「親日反民族行為者財産調査委員会」 が創設されて親日派財産を没収し、「親日派」の子孫を排斥弾圧する法律(日帝強占下反民族行為真相糾明に関する特別法及び親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法)が施行された。
さらに、日本に植民地支配への明確な謝罪と反省、賠償を要求したが、これには、小泉首相が靖国参拝を繰り返したことも影響した。そもそも、中国が総理などの靖国参拝に反対しているのは、いわゆるA級戦犯のなかに日中戦争の責任者でとみられる人たちがいることを理由にしており、もし、A級戦犯を分祀したら、中国は参拝にそれほど強い批判はしないとみられている。
それに対して、韓国には中国のような明確な参拝反対理由はないし、もし、明治以降の戦争のすべてを問題にされたら、A級戦犯を分祀したところで同じことであって、靖国神社の存在そのものへの反対なのであるから、日本側としてはいっさい相手にするべきでないのである。
また、盧武鉉は日本とドイツを同一視して、ドイツ訪問のときには同調を求めたりしたが、かえってナチスの蛮行を甘く見ることにつながるという批判も受けた。
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シュレーダー元独首相と再婚相手のキム・ソヨン氏(シュピーゲル・オンラインより:編集部)
ちなみに、このときの首相だったシュレーダーは、退任後にロシアのガスプロムの役員となって批判を浴びたが、離婚して韓国人女性と結婚し、そののちは、韓国目線での日本批判を行っているが、まったく、政治家としての誇りもなにもない醜態ぶりである。
米国はアメリカ政府幹部に日本を共通の仮想敵国に規定しようと提案したといわれ米国を呆れさせたが、その当時、日本では報道されなかった。
ただし、米国については、反米思想であることははっきりしていたが、文在寅と違って現実重視で、イラク戦争に派兵してみずからの支持層から猛反発を受けた。
ずいぶんとひどい大統領で、弾劾はなんとか切り抜けたものの、石もて追われるように任期を終えたが、離任後に親族の汚職容疑で追い詰められて自殺した。そのために、同情が集まり人気が回復した。そのために盧武鉉路線への反省があいまいになり、それが首席補佐官で盟友だった文在寅の大統領就任を助けた。
任期途中で人気が落ちると反日化した、最たるものが、李明博であって、就任したときは、麻生内閣が低支持率に悩んでいたときで、そのあと民主党政権になって、稚拙な外交を繰り広げたので、少し気の毒だった。
李明博大統領(2008~2013年)は、大阪生まれで、生まれたときの名前は月山明博。一説によれば、明治天皇の明と伊藤博文の博だという。まさかと言う気もするが、「明」と「博」という字についてそういう由来を意識しなかったはずがなかろうから本当だと思う。
李明博は、「わたし自身は新しい成熟した韓日関係のために、『謝罪しろ』『反省しろ』とは言いたくない」「日本は形式的であるにせよ、謝罪や反省はすでに行っている」と比較的前向きの姿勢を示し、歴史認識問題で日本に謝罪を求める考えはないことを明らかにしたし、2011年訪日して天皇陛下に訪韓を要請した。
李明博の新自由主義的な経済政策はそれなりに成功した。しかし、米国とのFTAにともなう牛肉の輸入自由化は国民の反発を招いたうえに、リーマンショックに遭遇した。ウォン安に対して野田政権と交渉して通貨交換協定を130億ドルから700億ドルに拡大して救済してもらったりもした。けっこう手堅い手腕を見せたのだが、景気の悪化は国民の支持を失う結果となり、兄の汚職事件もあって、反日に活路を見出すことになった。
とくに念願としていた天皇訪韓も実現せず、それにかえて、慰安婦問題での追加措置を求めたが野田政権はにべもなく拒否した。そこで怒った李明博は、それまでの大統領も控えていた竹島上陸という暴挙に出て日韓関係は最悪の状況のまま任期切れとなった。
もちろん、李明博は現代建設の社長をつとめた有能なビジネスマンであったが、政治家としては経験が浅かったのが惜しまれる。
しかし、李明博にとって気の毒だったのは、その任期がほぼ民主党政権と重なったことである。十分に練られているとは言い難かったがそれなりに対日関係に前向きだった李明博を上手に面子が立つように誘導することなく、原則論を繰り返した民主党政権側にも責任があると思う。
天皇訪韓については、クリアすべき問題が多いが、もし実現するならどういう条件が整うべきなのかしっかり説明すべきだったし、あるいは、無理なら皇太子訪韓ならどうかとか、対応はいろいろあったかと思うのである。
そのあとが朴槿恵大統領(2013~2016年)だが、彼女の場合は、父親の経歴などから親日的でないかと思われたのだが、就任早々から反日で「告げ口外交」を繰り広げた。
これは、ひとつには、父親の経歴から親日派とみられがちなので、あえてそういうポーズを取らざるを得ないという見方もあった。しかし、呉善花さんなどは、最初から、彼女の世代は反日教育(韓国では保守政権のもとでも歴史学者たちはわりに左寄りで、日本の戦後教育に似たようなところがある)を子どもの時から受けてきたので、親日だという期待は甘いと指摘していたが、まさにそういうことになった。
もうひとつ、金大中までの大統領は、日本統治時代を自分で経験しており、ひどいことばかりの時代だったというわけでないことを知ってたが盧武鉉以降の若い世代は自分では知らずにデタラメな歴史教育を通じてしか知らないと言うことがあるし、朴槿恵の場合は、貧農の子であったのが日本統治のお陰で教育を受け成り上がれた父親の本当の人生から目を背けたかったのだと思う。
しかし、安倍首相が一方で毅然と対応し、他方で朴槿恵大統領自身への批判は抑制し対話を求めた結果、オバマ政権の仲立ちもあって、2015年には、慰安婦についての「最終的かつ不可逆的な解決を確認」する合意がされるなど任期後半には融和的になっていった。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

捏造だらけの韓国史 - レーダー照射、徴用工判決、慰安婦問題だけじゃない -

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